旧砂取細川邸庭園
江津湖周辺を散策していると、現在のくまもと文学・歴史館と西側の加勢川とのあいだにその庭園が残っています。
観光地として大きく喧伝されることは少ないものの、江戸時代後期に整備したとされる藩主細川家の御茶屋の庭園で、屋敷は地名をとり「砂取邸」と呼ばれていました。熊本藩細川家ゆかりの静謐な空気を今に伝える、知る人ぞ知る庭園です。

10代藩主細川斉護の正室の顕光院の隠居屋敷として建てられましたが、これは廃藩置県で熊本城内から転居を余儀なくされたことによるものでした。
その後、明治時代になり、明治10年から細川内膳(ほそかわないぜん)家の屋敷となりました。大正末期から戦前にかけては料亭花壇として多くの文人にも親しまれていたようです。

熊本藩細川家に惹かれる方にとっては、この庭園は単なる観光スポットではなく、日常の気配に触れられる“入口”のような存在です。華美な城郭文化とは異なる、静かな権威と洗練された感性がそこにはあるように感じます。
私自身、時々江津湖へ散歩に出かけることがあります。清らかな湧水と水の流れや野鳥に癒されながら、心身ともにとてもリフレッシュできるお気に入りの場所です。
庭園はそんな江津湖からも近く、湖畔の散策と組み合わせて訪れるのにも最適です。同じ「水」をテーマにした風景でありながら、まったく異なる表情を見せてくれます。湖畔散歩のあとに立ち寄れば、旅の印象に奥行きが生まれるはずです。
観光の派手さではなく、静けさの中に価値を見出したい方へ。あるいは細川家の足跡をたどり、熊本の歴史をもう一歩深く味わいたい方へ。「旧砂取細川邸庭園」は、そうした人にこそ静かに開かれている場所です。

【芭蕉園】
また、4月下旬から6月上旬頃になると、庭園近くにある芭蕉園付近でホタルの飛翔が見られます。熊本市内でありながら、ホタルが見られるのはとても嬉しいことですね。
江津湖の風に吹かれたあと、少しだけ足を延ばしてみてはいかがでしょうか。そこには、派手さのない確かな美が待っていますよ。
